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ミュンヒハウゼン(1720-1797)
1720年5月11日、ドイツのハーメルン近くのボーデンヴェルダー(Bodenwerder) という町で、後に「ほら吹き男爵」のモデルとなる、カール・ミュンヒハウゼン (Freiherr von Karl Friedrich Hieronymus Munchhausen)が生まれました。 8人兄弟の5番目ということで跡継ぎになる可能性もなく、15歳の時にブラウン シュバイク公爵という人の所に侍従として奉公に出されます。1737年に公爵の 兄でロシアに住むアントン・ユルリッヒ公から、侍従を少し回して欲しいとい う依頼があり、ミュンヒハウゼンが指名されてロシアに赴きました。当時ロシア はトルコと戦争中で、ミュンヒハウゼンもこの戦役にユルリッヒ公と一緒に参加 することになりました。このトルコ戦役での体験が後の彼の冒険談の序章となり ます。 1739年公と共にロシアに戻っていたミュンヒハウゼンは高貴な女性と道ならぬ 恋をして相手の女性は彼の子供を産んでしまいます。その子供はすぐに里子に 出されますが、その家系はロシアで現代まで存続しているそうです。 (ドイツ側の家系は途絶えているらしい) 1740年ユルリッヒ公の妻のアントン・レオポルドヴナがロシア皇帝イヴァン6世 の摂政に就任します。するとミュンヒハウゼンは中尉に任命され、第一連隊を 任せられました。しかし翌年今度はエリザベータ・ペトロヴナが政変を起こして ユルリッヒ公とその一族が根こそぎ逮捕されます。しかしミュンヒハウゼンは うまく逃げ出して身を隠していました。 1744年彼はアンハルト・ゼルブスカヤ王女(後のロシア皇帝エカチェリーナ2世) の儀仗兵に採用されます。この年、判事の娘のヤコビン・フォン・デュンテンと 結婚。のち彼は騎兵隊の責任者にまで出世します。 1750年、彼は休暇を取り妻子を伴ってドイツの実家に戻りますが、母が亡くなり、 兄が二人亡くなっていたりなどでドタバタして、なかなかロシアに帰国できませ ん。そのうちロシア軍の方は強制除隊になってしまいます。結果的にはこのあと ずっと彼はボーデンヴェルダーの町で暮らすことになってしまいました。 1760年頃から彼は居城で酒を飲みながら友人達にロシアに居た頃の冒険談を色々 語るようになっていました。彼の話は若干(?)の脚色や誇張なども入っていて 面白かったため、やがて彼の話をまとめた本が出版されたりもしました。しかし この冒険談が有名になるのは、Rudolf Erich Raspe(1737-1794)が1783年に 「M-h-sの話」という本をドイツ国内で出版してからです。彼はハノーバー出身 なので、ボーデンヴェルダーの近所でもありますし、ミュンヒハウゼン男爵の 話を直接聞いた1人ではないかとも言われています。 ラスプは1785年には亡命先のイギリスで一部記述方法などを改訂して「ミュンヒ ハウゼン男爵、ロシアでの素晴らしき旅と軍役を語る」という本を出版します。 そして、この後、色々な人がこの本を元に、更に話を大げさにしたり、あるいは 新しい話を加えたりして「ほら吹き男爵の話」は広がっていきました。ラスプの すぐ後に出たドイツのGottfried Burger(1747-1794)の本も有名です。ビュルガー も男爵を直接知っていたとのことで、ラスプと同様に自分が男爵から聞いていた 話をまとめているそうです。その後の「ほら吹き男爵」本はラスプ本とビュルガー 本の双方から話を取ったり、更にオリジナルを加えたりしています。 ミュンヒハウゼン男爵は1797年2月22日に亡くなりました。1790年に奥さんに 先立たれてしまった後は寂しい生活であったようです。 ■ブートストラップ コンピュータを起動する時に使用する小さなプログラムをブートストラップ (略してブート)といいます。このプログラムは最初の何個かの命令を実行 するとその命令がそれに続く命令を読み込むようになっており、その命令に より更にその先の命令が読み込まれる、という仕組みでプログラム全体が メモリーに読み込まれる仕組みになっています。1970年代前半頃まではこの 最初の数個の命令は毎朝コンピュータを起動する時に人間が手作業でCPUに 直接二進数で入力していました。 この「ブートストラップ(直訳すると靴ひも)」の語源はラスプ本の「ほら 吹き男爵の冒険」の中に出てくる話が元になっています。ある時男爵が沼を 飛び越えようとしたが沼が大きすぎて途中で落ちてしまった。どんどん沈ん でいくので、これはいかんと、男爵は自分の靴ひもに手を掛けて引っ張り上 げて、結果的に沼から脱出することに成功した・・・・という話です。水中 で自分で自分を引っ張り上げたという話が、自分で自分を読み込むプログラ ム「ブートストラップ」につながっています。(ビュルガー本では靴ひもで はなく自分の髪をつかんで引き上げたことになっている) ■ミュンヒハウゼン症候群 簡単に言えば「仮病」なのだが、その手法がしばしばマニアックで巧みであり 医者もコロリと騙されてしまうとして精神医学方面で最近問題にされてきてい るもの。身体の異常が現実には存在しないのに症状を訴えるという点では、 心身症などとも似ているのだが、ミュンヒハウゼン症候群の場合は本人が実は 病気でないことをきちんと意識している点が違う。強いて言えば病気を装わな くてはならないほど本人が精神的に追いつめられている状態が問題である。 このバリエーションで代理ミュンヒハウゼン症候群というのもある。これは 「世話する者」が「世話される者」を病人に仕立てて病院に駆け込むケースで ある。多くは母親が子供を病人にしたてる場合で、検尿のコップの中に細菌を 混入させたりするので、よほどこのケースを疑っていない限り医者も完璧に 騙されてしまうのである。
Dropped down from 今日は何の日.